「改元をきっかけに一時代が終わり、新しい時代がやってくるかのように、人々は何かの終焉(しゅうえん)と何かの始まりを語りたがっている。「歴史の総括」。だがこうした強迫観念とでもいうべき現象は、私たちが日々過ぎ去る時や年月に押し流され、自らの歴史的な位置を見失っていることと深い関係がある。」「歴史とはたんに直線状に流れる時間の経過ではない。日常の惰性的な連続性を疑うことなく生きながら、真に歴史的な批判意識を持つことは不可能なのだ。一方で国家は「時代遅れ」や「進歩」を連呼しながら、表層の時間や暦を国民の統合と支配のために利用しつづける。」
「現在を物差しにして短絡的に未来を予測し、その先取りされた幻影の下に現在を消費的に生きる人間の時間意識に対し、いちはやく警鐘を鳴らしたのが安部公房の「第四間氷期」である。」
新潟県立歴史博物館開館特別展「ジョウモネスク・ジャパン2000」図録
「数の神秘」西田泰民より
「人間は自分の創りだしたものでありながら、いつの間にかそれがもともと存在していたかのように思いこみ、恐れを抱いたり、神秘を感じたりする性質を持っている。数を見いだし、自然を数えるようになったとき、人々は地域に応じて、周囲の世界を構成する不思議な数を発見し、重要な原理として後世へ受け継いできた。そしてさらにそれに飽きたらず、ラッキーナンバーや不幸の数を輸入したり輸出したりもするのである。ついぞ数年前まで考古学者しか使わなかったようなミレニアムの言葉がいまやちまたに氾濫しているのは2000という数のせいであるのはいうまでもない。」