「絶滅の人類史 なぜ「私たち」が生き延びたのか」更科功著より |
「初期ホモ属の分類は混乱しているものの、これらの化石から大きな進化傾向を読み取ることはできる。それは、脳が大きくなってから石器を使い始めたのではなく、石器を使い始めてから脳が大きくなった、ということだ。」
「両刃のナイフのような石刃や、木の実などをすり潰すのに使った可能性がある石皿、着色するのに便利な顔料(色のついた粉末)などは、約28万年前からアフリカで見つかり始める。これらはホモ・サピエンスが作ったものと思われる。」
「ヒトが住んでいた約7万6000年前の南アフリカのブロンボス洞窟から、土を固めた塊が見つかった。その表面には、網目状の模様がついていた。模様があるからといって、獲物が捕まえられるわけではない。模様があっても何の役にも立たない。でも、役に立たないことが重要なのだ。具体的な利益に(少なくとも直接は)結びつかない行動は、象徴化行動である可能性が高いからである。
また同じブロンボス洞窟から、穴の開いた貝殻がたくさん見つかった。おそらく紐でつないで、ネックレスのように身につけていたと思われる。これらはヒトが象徴化行動を始めた確実な証拠とされている。」
「現在、多くの野生生物が、絶滅の危機に瀕している。その中には、密猟などで人間に直接殺されて、絶滅しそうな生物もいる。しかし、もっとも多いのは、生息地を人間に奪われて、絶滅しそうな生物だ。」