「石油ショック前というのは、スタイルの新しさやテクニックの複雑さや、そういうものを追求していれば、それで音楽は、現代音楽というものは進歩しているということになって、聴衆もそれをわかって当然で、聴衆もわからないと恥ずかしいというそういう進歩主義に支えられた前衛音楽の価値観というものが当たり前のように幅を利かせていたわけです。これは人類の進歩、産業文明の革新のイメージとパラレルだったわけです。けれども、その価値観といいますか信仰が、石油ショックでガラガラと音を立てはじめて、何を信じたらいいかわからなくなって、終末論的空気も急にただよって、バロックとかロマン派とか、進歩主義的な立場からもう振り返る必要もないというようにされていた昔のスタイルが作曲の世界でもいろいろ蘇ってきまして、乱暴に申せば、新しいスタイルの音楽というものが前衛時代と大きく変わって混乱して、いろんな時代のいろんなスタイルというものが引用されたり、思い出されたり、もう一回やり直されたりするようになって、現代音楽といっても、いつの時代の音楽だかわからなくなってくるという、そういう現象が1970年代半ば、急に起きてきたという言い方ができると思います。こうした変化は、一般にはモダニズムからポストモダニズムへの変化といわれることも多いですけれども、それと同じことを柴田南雄は、もっと具体的に、石油ショック前と石油ショック後に分けたわけです。」
http://www4.nhk.or.jp/classicmeikyu/x/2016-09-10/07/69013/4756192/