「道徳性の起源 ボノボが教えてくれること」フランス・ドゥ・ヴァール著、柴田裕之訳より 2 |
「なぜ宗教が発達したのかという疑問に対しては、規模を狭めて考えれば答えが得られるかもしれない。たとえば、19世紀のアメリカ合衆国におけるコミュニティの寿命を調べた研究がそれにあたる。集産主義のような非宗教的イデオロギーに基づくコミュニティは、宗教的原理に基づくコミュニティよりもはるかに速く崩壊した。(中略)ともに祈りを捧げ、同じ儀式を執り行うといった、連携した活動が深い絆を生む絶大な効果を持つことはわかっている。これは、いっしょに行動すると関係が改善するという、霊長類に見られる原理と関連づけられる。この原理は、サルが自分の真似をする実験者を好むことから、大学代表のボート選手が独自に練習するよりもチームで練習したほうが身体的抵抗力がつく(たとえば痛みを感じづらくなる)ことまでさまざまな現象に表れる。」
「何をどう調べてみても、科学にはほんの数千年の歴史しかなく、したがって人類の歴史の中では明らかにごく最近のものであるという結果になる。科学は真の偉業であり、決定的に重要だが、宗教と同じ次元で扱うのは浅はかとしか言えない。」