美術手帖2016年8月号より |
「1938年2月に行われた「思想戦講習会」で、陸軍省新聞版(陸軍のプロパガンダを担当する部署)に所属する清水盛明中佐は、次のように説明している。日中戦争が開戦して約半年後のことだ。
「由来宣伝は強制的ではいけないのでありまして、楽しみながら不知不識の裡に自然の感興の中に浸って啓発教化されて行くといふことにならなければいけないのであります。」(「戦争と宣伝」)
プロパガンダは無理やりでは効果がない。そうではなく、楽しく、自然に浸透するものでなければならない。そのためには、マンガ、映画、演劇、音楽などエンターテインメントを活用するのがよい−これが清水の主張だった。そしてこの主張は、帝国日本の「思想戦」研究のひとつの到達点であった。」
「これに対し、米国でもプロパガンダの戦いは「心理戦争」と呼ばれ、やはり重視された。そして日本人が恐れたように、様々な人気キャラクターが戦争動員に利用された。
その代表作は、ディズニーのアニメ「総統の顔」(1934年)であろう。ドナルド・ダックがナチス・ドイツを模した「狂気の国」で暮らし、様々な不条理を強いられるという内容だ。そのなかには「ハイル・ヒトラー!ハイル・ヒロヒト!ハイル・ムッソリーニ!」と叫ぶシーンさえある。」
https://www.youtube.com/watch?v=VihggRSvVic
ワールドニュース ベルリン1 かないみきより
「ファンシーなショッピングモールにでもやってきたかのようだ。広告や商業ディスプレイのようなヴィヴィッドでときに奇抜なイメージ、近未来的なインスタレーションや映像の数々に、クールなデザインでディレクションされた会場内。オープニングに来ている顔ぶれにも、カッティング・エッジな装いや髪型の若者たちが目を引き、DISの世界観が鮮やかに立ち上がる。」
否(アン)パン人間 「生きるアート 折本立身」展 椹木野衣より
「けれども、本展がそこに留まらないのは、これまで日本ではほとんど見る機会のなかった膨大な数のパワフル、カラフル、そしてワイルド極まりないドローイングが壁面をところ狭しと埋め尽くす様で、これはもう圧巻というしかない。」
(こんなことを感じるのかと思ったので)
海と火山「秋山陽 アルケーの海へ」展 清水穣より
「より標準的な応答としては「素材相対主義」(金子賢治)が挙げられよう。オブジェや彫刻の本質は非物質的なイデアにあるから、それを彫刻家はあるときは大理石、あるときは木で表現する。対照的に、陶芸の本質は素材と制作プロセス(土と焼成)に内在する、つまり陶芸とは「土とは、焼成とは何か」を追求するメディウム・スペシフィックな芸術の最たるものであり、その限りで陶芸のモダニズムがあり得た、と。」