「ミシェル・ルグラン自伝」より |
「『ローラ』の後でジャックが見せてくれた脚本には『不誠実』あるいは『シェルブールの雨傘』という題がついていた……一〇日間、私はジャックと一緒に部屋にこもって、歌を入れたい場面のテーマを作ろうとしたが、失敗した。まったくうまくいかない、台詞と歌をつなぐ部分がわざとらしく、ほとんど奇妙に見えるからだ。観客が疑問を持つおそれがある。「話していた人物たちが、なぜ突然歌い出すの?」あるいはまた「なぜ、彼らは歌うのを止めてしまうの?」ジャックは考えを巡らせた末、つぎのような結論に到達した。「ミシェル、この台詞と歌の間の行こうがぼくたちを縛っている。全部が台詞か、全部が歌の映画を作ろうよ」
私はこの好機をとらえた。
「まず全部を歌でやってみよう。全編、歌が台詞に取って代わった長編映画はこれまでに作られたことがない。もしそれができたら、新しいミュージカルの誕生だ!」