「反逆の神話 カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか」ジョセフ・ヒース+アンドルー・ポター著、栗原百代訳、より |
では「オルタナティブ」という発想はどこから生じたのか?本物であるために人気を落とさねばならないという、この発想の源は何なのか。」
「これが音楽業界だけのことだったら、さほど重大ではなかったはず。だが残念ながら、カウンタカルチャーの思想はこの社会へのぼくらの理解に深く組み込まれており、社会および政治生活のあらゆる面に影響を与えている。最も重要なことには、それが現代のすべての政治的左派の概念のひな型となった。カウンターカルチャーはラディカルな政治思想の土台として、ほぼ完全に、社会主義に取って代わった。だから、カウンターカルチャーは神話にすぎないのだとしても、それは数知れない政治上の結果をもたらして、膨大な数の人を誤らせた神話である。」
「アーティストたる者、主流社会と対立するスタンスをとらなければならない、との考えは、まったく目新しいものではない。18世紀に始まって、19世紀中ずっと芸術的な創意を支配しつづけたロマン主義に起源を持つ。」
(ヒッピーやパンクのファッションについて)
「カウンターカルチャーの反逆者は自分のしていることが本当にラディカルであると、社会をゆるがす挑戦だと信じていた。(中略)なにせカウンタカルチャーの反逆者によれば、伝統的な政治的左派の問題は、それが皮相的であり、「ただ」制度改革をめざしているだけということだ。これに対し、カウンタカルチャーの反逆者は、より深いレベルの抑圧に反撃していると思われた。それでも、そのラディカルな介入にかかわらず、具体的な成果を見つけにくかった。」
「ジークムント・フロイトの業績は僕らにとって、魚にとっての水のごときものになった。ほとんどそれが一つの理論だと、正しいか間違っているか証明できることだとみなされていない。それは僕らが現実のすべてをそこを通して見るレンズと化した。(中略)一つだけ例を挙げると、たいてい人は「潜在意識」と呼ばれるものがあると思っている。奇妙な夢を見たり、言葉を取り違えたり、説明のつかない行動に及んだとき、みんな潜在意識のせいにしてしまう。これは一つの理論にすぎないのだと、そんなものはないかもしれないと言っても、不信感とあざけりが入り交じった態度を返されるだけだ。だって潜在意識があるのは当然なのだから。それを否認する者はひたすら否認されるのだ。
しかし潜在意識が本当に意識下のものなら、どうしてそこにあるとわかるのか?直接意識できるものなら、それはもはや潜在意識ではないだろう。だから明らかにこれは一つの仮設にすぎないのだ。」
「カウンタカルチャーの思想は多くの点でフロイトの心理学理論から直接導かれている。フロイトによる人間の意識の構成の解き明かし方に鑑みるに、文化が総体として抑圧のシステムであるとの結論はまず避けられない。」
「カウンタカルチャーの思想はつまるところ、誤りに基づいたものである。カウンターカルチャーの反逆は、せいぜいが偽の反逆なのだ。進歩的な政治や経済への影響などいっさいもたらさず、もっと公正な社会を建設するという喫緊の課題を損なう。」
(大人気の恋愛マニュアル本「ルールズー理想の男性と結婚するための35の法則」について)
「こうした状況にあって、多数の若い女性が「ルールズ」を手にとったことは、まったく驚くにあたらない。多くのフェミニストは早くから気づいていた。「自由恋愛」がこの社会における大規模な女性の性的搾取を可能にしてしまったのだ。」
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