「カルメン故郷に帰る」より |
おきんの父:するとおきんは文化ってやつかね。
校長先生:そうだとも、文化を担う一員だね。こんな浅間山麓の片田舎から有名な人間が出て、浅間山も鼻が高いよ。
カルメン(おきんー高峰秀子):あたいみたいに男がうるさくって、たまにはこういう静かなとこへ来たくなるようじゃなきゃ芸術家じゃないのよ。
マヤ朱美:あたい、このごろわかんなくなっちゃった。
カルメン:なにがさー
マヤ朱美:芸術ってものが。
カルメン:なさけないねー、あんたってひとは。あたしたち芸術のためには死んだっていいんじゃないのー。
マヤ朱美:そりゃー、あたしだってそう思ってるわ−。でも行きづまりっていうのかしら。このごろ、とっても苦しいの。
カルメン:元気をお出しよ。芸術に悩みはつきものなんだから。
「カルメン故郷に帰る」より
木下恵介脚本、監督
衣裳提供、髙島屋
1951年国産初の総天然色映画