「桝田:(略)その中で彼は、「イメージと絵具の塗り(=ペイント)が、完全に結合していく」と書いている。絵具でありながら、同時にイメージでもある。その逆もまたしかり、というようなことを言っているんですね。確かにそれはスミスの作品を賞賛するための言葉なのですが、そのままベーコンの絵画にあてはまるところがあると思います。つまり、単にキャンバスに撫でつけられた絵の具でしかないものが、人間の身体を表しているように見えてしまう、そんな奇跡的とも言える現象に対する驚きに敏感だったことが窺えます。物質的なもんである絵具と、ある意味で非物質的なものであるイメージの、のっぴきならない関係性に対して非常に意識的な人だったと思うんです。」