「小山登美夫の何もしないプロデュース術」 |
「たとえば「面白くない絵でも見にいく」のは「ものさし」を磨くためです。「わざわざ興味のない作品まで見る」ことを繰り返すことでしか、「評価のものさし」に刻まれる目盛りは正確になっていきません。無駄な時間の連続の中にこそ、「自分の目=ものさし」を磨くための大切な経験が潜んでいるのです。」
「もうひとつ、見る目を磨くために大切は基本があります。
それは「直接、見る」ことです。
(中略)
情報やデータでは、絶対にわからないことがあります。
それが、本物の作品が持つ「実在感」です。
画面を覆う微妙な陰影、わずかな凹凸、色合いや素材感、筆のタッチ、スケール感、どんなキャンバスに描かれているか、どのくらいの大きさか、どんな空間でその作品を体験したか……。そうした具体的で実感的な要素は、作品を「直接、見る」ことでしか感じられない、アート理解の基本ともいえる部分です。
できるだけ、たくさんの作品を見ること、触れること、感じること。
しかも「直接」体験すること。」
「まず、「具象」「抽象」といったジャンルや、「絵画」「彫刻」「写真」「映像」といった作品形態はまったく問題にしません。どんな作品であっても、先入観なく受け入れ、鑑賞するよう努力します。」
「もしも私が、アーティストの創造領域にまで知らぬ間に入ってしまったら……。
いつしか私が、「あれを描いてほしい」「こんな作品をつくってほしい」と注文を出すようになったら……。
それは、明らかにギャラリストとして「失格」でしょう。
そのために私は、ギャラリストとして断じて「しないこと」「してはならないこと」を決めています。」
菅木志雄インタビュー
「美術館での展覧会の場合、「こんな作品をつくってほしい」といった依頼が入ることはあります。しかし、ギャラリーから依頼されたのは小山さんがはじめて。素材を提供してくれ、今回の展示でほしいイメージまで語ってくれました。」
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