「この新しい一派は、ただ腐敗し、分裂している」とラファエル前派の画家ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティは弟に向けて書いている。同じくラファエル前派の仲間であるウィリアム・ホルマン・ハントは、1883年にこれに続け、「世界に対して警告しよう。現代絵画に脅威を及ぼし、絶滅以外のなにものでもない結末をもたらそうとしているもの、それは印象主義である」と記していた。一方、「ダービー開催日」や「ラムズゲイト・サンズ」のようにきわめて逸話的な絵で知られるウィリアム・フリスは、「(印象主義の)大流行が消えていくことはまちがいない。ばかげたもの、誤ったものすべて、遅かれ早かれ消えるのだ」と断言して、英国の不安をなだめた。
「印象派はこうして世界を征服した」フィリップ・フック著、中山ゆかり訳