すべての絵は絵の具の絵である。ー 絵の具の絵にいたるまで |
絵の具の絵(エメラルドグリーン)
paint painting (emerald green)
油彩、キャンバス
oil on canvas
60.6×72.7cm(F20)
2014
絵の具の絵(カドミウムオレンジ)
paint painting (cadmium orange)
油彩、キャンバス
oil on canvas
60.6×72.7cm(F20)
2014
絵の具の絵(コバルトバイオレットライト)
paint painting (cobalt violet light)
油彩、キャンバス
oil on canvas
60.6×72.7cm(F20)
2014
絵の具の絵」のシリーズを制作するまでに、2009年に「地図」シリーズ、2010年に「抽象ガール」シリーズ、2011年にかけて「盛りガール」「彫りガール」を制作してきました。
「地図」は、絵画の「地」と「図」についての作品です。地の模様が人型に抜けていると、そこに人物が描かれていなくても、人(図)を見出します。人(図)の上に、人(図)と同じ形の地の模様を描いた作品では、人型の模様を描いただけにすぎないのに、人(図)の身体に模様を描いたように見えます。
「抽象ガール」は、抽象画も絵具によって描きだされたものとして、模様や背景の色などと、並列に扱い、絵画の背景に配する、地になるという作品です。
「盛りガール」は、身体や背景に描いていた模様を盛り上げています。背景にある模様は、レイヤーとしての構造は、奥にあります。盛り上げた模様や背景描写は 物理的には絵画面の再前面にあり、描いているモチーフに関わらず、絵具そのものの物質感が出現します。
「彫りガール」は、描いている面から盛りあげている絵具を、キャンバス面を基軸として、反対方向に持っていくというものです。絵具を置いている基底材がゼロで、盛りあがっている部分がプラス、彫っている部分がマイナ
スになります。盛り上げている部分の反対に、描いているものとは関係なく、彫っている線や面は、物理的には奥にあります。凹面の彫刻として成り立っています。
このような作品制作をしてきた流れで「絵の具の絵」を構想しました。
日本画制作をやめた後、彫刻作品を作り始めました。その後、油彩画制作が多くなったため、画家やペインターと、ひとに紹介されることがあり、違和感がありました。彫刻における木、鉄、陶やFRPなどのように、絵画制作も、絵具や筆、写実ということも、素材、技法の一つとして扱ってきました。制作の工程も同様に、完成にむけて、どういう順番で進めていくかという、ある種システマティックなものです。油彩、写実というものは、表現するものに合わせて選択しているにすぎないと考えてきました。
そのため、絵画とは何かを考えたり、問うたりすることはない姿勢、作品であると自分では思っていました。
このようにして「絵の具の絵」を制作し、その前からの制作と思考の流れを追うと、絵画とは何か、を考え、それに関する制作を続けてきたことが、自分でわかってきたのでした。
すべての絵は、絵の具の絵である。と言うと、絵具を使っていない「絵画」もありますので、そうではないと反論がすぐ出てきそうです。それらも、絵具を使わないかわりに、「絵」の「具」を使っています。
すべての絵は、だまし絵でもある。とも考えています。意図しないものを表現の結果として残した絵画だとしても、意図しない結果を見せる絵画であり、そう見えるように意図して制作しているからです。