「気が遠くなる未来の宇宙のはなし」 佐藤勝彦著より |
「人類すらいないであろう未来の宇宙のことを知って、何の役に立つのかな?」
そう思われるのは、当然だと思います。はるかな未来の宇宙の姿を知っても、日々の生活の糧を得る上ではほとんど役に立たないでしょう。
でも、明日のご飯と同じくらいに大事なことが「パンのみにて生きる者」ではない人間にはあることも、皆さんはよくご存じでしょう。宇宙について知ること、宇宙の中で生きる人間と宇宙との関わりを知ることは、いわゆる「実用性」とは別の価値があるー宇宙の研究に長く携わってきた者として、強くそう思います。
「このようみ、基礎科学であっても「役に立つ」ことは多々あります。しかし、基礎科学の本来の目的はやはり、実用性とは少し離れた別の部分、すなわち真理の探究そのものにあるのは間違いありません。特に天文学や宇宙物理学についていえば、それはやはり「自分の立ち位置をしる、人間の立ち位置を知る」ということに尽きると思います。
私は何者なんだろう、どうしてここにいて、これからどこへ行くんだろうー人間にとっての「究極の問い」に答えるには、やはり自分を取り巻く世界のことを知らないといけません。」
「宇宙そのものが膨張する速度には制限がないので、銀河の後退速度が光速を超えることは問題ありません。」
「気が遠くなる未来の宇宙のはなし」 佐藤勝彦著より